●申について
十二支では9番目の干支が「申」になります。この十二支は遥か昔、中国で農業に関連する暦として使われていた一種の農業用語です。これは農作物の成長を12段階で表す意味があり、暦として使われていました。それが、江戸時代に日本に伝承され、さらに庶民でも分かりやすいように、十二支に12の動物が当てはめられました。現在「申」を動物の「猿」としているのは、十二支を一般庶民にも広く理解してもらい、多数の字を読めない人でも、分かりやすく、憶えやすくするために、12の動物を割り当て、「申」には動物の「猿」が割り当てられました。
申年の
「申」は本来は「しん」と読み、これには「伸びる」や「申す」という意味があります。「申」という漢字は「雷」が原字です。雷は、神が鳴らすものとされ、「神鳴り」とも書かれ「稲妻」を表した象形文字で、神の技のことです。この神の字の右側の申が現在の干支の「申」です。稲妻は、屈折しながら、あちこちの方向に伸び、走ることから、「申」を「のびる」という意味や、「もうす」という意味にもなってきました。申告(しんこく)や申請(しんせい)という言葉は、そういう漢字の意味からきていると言われます。また、江戸時代、一日24時間を十二支の時間で割り当てていましたが、申の時間は15時から17時のころの時間で、方角は南西微北を指しました。
ちなみに、今の12時のお昼のことを「正午(しょうご)」といいますが、この「午」は干支の「うま」のことで12時ころです。
また、「申」は病や厄が「去る」と云われ、縁起の良いものとされています。農業関連では、「草木が十分に伸びきったころで、実が成熟して香りと味が良く、固い殻におおわれていく時期」で、「伸びる」の意味があり、伸の字が簡略化され「申」になったとも言われます。ちなみに、農業関連では、十二支の1番目の「子(ね)」は、「増える」のことで、これから子孫を増やそうとする種子の時期のことであり、十二支の最後の12番目の
「亥(い)」は「とざす」という意味があり、新らしい命の「子」が生まれ、新しいいぶきが封じられいる時期のことです。
「十干」と「十二支」について
●2016年は「丙申」(ひのえさる)の年ところで、2016年の干支は
「丙申」(ひのえさる)です。 「甲乙丙丁」などの「干」が10個で「十干」(じゅっかん)となり、支が12個で「十二支」となり、それが組み合わさって干支(えと)と呼ばれ、合計すると60
種になります。還暦は60歳のことですが、生まれて干支の組み合せで60年になると1回転して、干支が元に戻ることから還暦と言われます。丙申は干支で33番目になります。
さて、この「丙申」(ひのえさる)の年は赤い色が縁起が良いとされます。こんな言い伝えがあります。「丙申」(ひのえさる)の年に:
・赤い服を身に着けると病が去る。
・赤い肌着を贈られると、その後は下の世話にならないですむ。
・赤い下着を4枚贈られると、死(4)が去る。「丙申」(ひのえさる)の年は赤が良い。
●赤と申/猿の関係とは?
「赤」とは、「あかるい」がその語源になったといわれています。いろいろな色の中で、赤は、鮮やかで、明るく、すぐ目に付くものです。その鮮明な「赤」には、穢(けが)れを祓(はら)い、厄を落とし、魔よけの効果があるとされてきました。古代の土偶や埴輪には、赤い顔料を塗っていました。また、神社の鳥居も、お地蔵さんのよだれかけも皆赤い。お赤飯にも同様な意味があるとか。また「赤ちゃん」という呼び方は穢(けが)れていない、無垢(むく)の象徴でもあり、生命力の表現とも言えます。現在、赤信号、赤い消防車、赤い広告など、目に付き、注意を喚起する場合で赤が使われているのはこのためです。このように、魔よけの意味があるとされる「赤」と「猿=去る」という言葉の組み合わせにより、申年(ひのえさる)には、赤い下着や服で災厄を避けるという風習ができてきました。有名なのは、東京・巣鴨の地蔵通り商店街で売っている赤い下着などです。かって、ここでは、申年の年に、縁起物の赤パンツを売り出したら評判になり、「おばあちゃんの原宿・巣鴨」=赤パンツのイメージができました。
●十二支の順と申十二支の順には話があります。神様への到着順は、ウシの背中に乗ったネズミが、神様の家の前でウシの背中から飛び降り駆けて、ネズミが1番目になったということです。申年(さるどし)は九番目で、続いて酉年(とりどし)・戌年(いぬどし)という順序なのですが、これは酉にあてはまるニワトリが、犬猿の仲と言われるサルとイヌの仲裁をしていたために、本来の順番に代わって、この順になったと言われています。
干支の順番についての面白い話 ●猿の語源とエテ公とは?では、さる「猿」という言葉はどこから来たのでしょうか?いくつかの説があります。動物の中では猿は知恵が「まさっている」ということから、「マサル」になり、さる=「猿」になった。「猿」の「サ」は「騒ぐ」「騒がしい」の意味があり、「ニホンザル=日本猿」の鳴き声から由来しているのではないかとも言われています。また猿を
「エテ公」と言いますが、どうしてでしょう? それは、「サル」と云う音が「去る」と同じなので、昔、商人の間などでは、「サル=去る」は縁起が悪いと考えられて、忌み言葉となり、反対の言葉の「得て」が当てられました。日本語には、縁起が悪いものを、逆の意味の言葉に換えて使う、変な言い回しが多くあります。果物の「梨」を「ありの実」と呼ぶところがあり、これは「なし」の音が「無し」になり、縁起が悪いと考えたための逆の言い方です。「公」は、軽蔑的な意味でも使いますが、昔は親しみを込めて用いる言い方でもありました。先公(先生)とか「ご老公」、「貴公」なども同じですが、今ではあまり良い意味では使われないようです。
申と猿、不思議な縁と意味があるものですね。
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